今回の裁判の意義

松竹伸幸さんは日本共産党の元職員であり、党員でした。『シン・日本共産党宣言』を刊行したことをきっかけに、2023年2月、「綱領と規約に違反し分派を形成した」として、共産党から除名されました。
 松竹さんは2024年1月の共産党の党大会で再審査(規約第55条)を実施するよう求めてきましたが、松竹さんの再審査請求書は代議員に配布されることもなく、21名だけの大会幹部団の責任で再審査は却下されました。
 これを受け松竹さんは除名処分の撤回と損害賠償を求めて、日本共産党を相手取って裁判を起こしました(3月7日)。松竹さんの主張は次の通りです。


(1)裁判で争える問題です
 共産党は「憲法では結社の自由があり、ある団体の中でどういうルールや処分でメンバーを裁こうとも自由だ。裁判所の出る幕ではない」と言っていますが、なんでもかんでも団体内で勝手にできるわけではなく、憲法では国民が裁判を受ける権利などが認められています。また、最近の最高裁判所でも、団体が自分たちのことを決められるのは、ある決まった範囲だという判決を出しており、これは裁判で争える問題です。


(2)除名の手続きがおかしい
 松竹さんを除名処分したとき、党の規約に定めたやり方どおりに共産党はしませんでした。①処分は共産党の「支部」という単位で決めるはずなのに、勝手にそこから処分権限を取り上げてしまいました。②「十分な意見表明の機会」が保障されているのに、松竹さんにはそのチャンスが与えられませんでした。③大会の再審査のやり方も冒頭に述べた通りの状況で、多数決での手続きもありませんでした。


(3)除名の理由がおかしい
 党の規約では「党の決定に反する意見を勝手に発表しない」と定められ、松竹さんが出した本がそれに違反したと共産党側は言うのですが、何が決定に反するのかはあいまいですし、そうなるとなんでもかんでも事前チェックが必要になってしまい、この規定を組織の側がなんの制限もなくふりかざせば、憲法が保障する「出版の自由」が踏みにじられてしまいます。
 また、松竹さんは、別に除名された鈴木元さんという人に「同じ時期に本を出せば話題になりますね」と言ったことが分派・派閥をつくったとみなされ、「党の中に分派・派閥はつくらない」という規約に違反したと共産党は言っています。しかし、この規定は組織のあり方を定めたもので個々の党員をしば
るものではありませんし、松竹さんの言ったことはただの出版の打ち合わせであって、とうてい分派・派閥づくりとは言えません。そもそも共産党のいう「分派・派閥」の定義がはっきりしません。
 松竹さんが「党首公選(党首を党員みんなの選挙で選ぶ)」を本の中で主張したことが規約に違反すると共産党はいうのですが、そもそも「党首公選をしてはいけない」という規約も決定も存在しません。

 さらに、松竹さんが「安保条約を維持し、自衛隊を合憲とする」ことを共産党の基本政策にすべきだと言ったことが共産党綱領に違反すると共産党側は言うのですが、綱領や党の決定では安保条約がまだ存在する段階でどう対応するかを書いており、その段階にふさわしい基本政策をつくるのは当たり前の話です。じっさい、共産党の党首だった志位和夫氏も、他の野党と連立政権を組む際に、安保条約を残し、自衛隊を合憲として扱うと言っています。
 以上の3点から、松竹さんの問題は裁判できちんと審査されて、その上で松竹さんへの除名処分は撤回し、党員として復帰させるべきです。同時に以下の点で、松竹さんに損害賠償を支払うべきです。


(4)「しんぶん赤旗」での松竹さん名誉をくり返し傷つけた
 共産党は、「しんぶん赤旗」で松竹さんのことを「綱領を真剣に学んだことがあるのか」とか「共産党に対する攻撃・かく乱者」「善意のかけらもない」「真面目な人やることじゃない」などとくり返し書いて、松竹さんの社会的評価を落としました。だから、名誉を傷つけた損害賠償を求めています。
 この裁判は、大きくは「組織・団体がメンバーの人権を制限したり、処分などでひどい扱いをしても『結社の自由』を看板にすれば司法はほとんど口出しできない」という、これまでの悪い流れを変える裁判です。この裁判で松竹さんが勝利することは、松竹さん個人のことだけではなく、結社の自由と、メンバーの基本的人権が両立するという新しい歴史のページが開かれます。